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売り上げアップ、家を買う社員激増、出生数も10倍にすべての従業員を70,000ドル(780万円)にしたCEO |ダン・プライスの物語

  • グラビティ・ペイメントのダン・プライスCEOは、2015年に社員の最低年収を7万ドルに設定した。
  • その後の数年間で同社の売り上げはアップし、子どもをもうける社員や家を買う社員が増えたという。
  • パンデミック下で収益は50%減少したが、すでに回復したとプライスは述べている。

6年前、クレジットカード決済会社グラビティ・ペイメンツ(Gravity Payments)の創業者兼CEO、ダン・プライス(Dan Price)は、120人の社員の最低年収を7万ドル(約770万円)に引き上げると発表して話題になった。

そのためにプライスは自身の100万ドル(約1億1000万円)の給与を減額した。

その後、同社の収益は急増し、子どもをもうける社員や家を買う社員が増加したとプライスはInsiderに語っている。

シアトルに拠点を置く同社の初任給は、かつてはおよそ3万5000ドルだったとプライスは言う。しかし、会社を発展させるにはすべての社員が自分の生活を維持できるだけの収入を得る必要があると彼は考えた。

そこで、社員の給料を2倍にすることにしたのだ。しかし、この試みは懐疑的に見られることもあった。

「多くのメディアは、我々が失敗するだろうと言った。中には我々が失敗するように応援するというメディアもあった」

しかし、メディアの方が間違っていたことが証明されたと彼は考えている。「6年が過ぎ、本当にすばらしい結果が出ている。初めて家を購入する社員の数が増え続け、家を持つ社員は以前の10倍になった。また社員の70%が借金を返済できるようになった」とプライスは言う。社員の約3分の1は借金を完済したという。

「社員の出産数も10倍に増えた。以前は会社全体で1年間に多くて2人、あるいはまったく生まれない年もあったが、この6年間では妊娠や出産を報告する社員が65人以上になった」

同社の社員は、最低年収アップに対する感謝の気持ちを込めて、プライスにテスラ(Tesla)を贈った。

「本当にうれしかった。仕事やクライアントとのミーティングに行くときに車を運転するたびに、我々がすばらしい関係を築けていることを実感している」

社員は感謝の気持ちを込めて、プライスCEOにテスラを贈った。

社員は感謝の気持ちを込めて、プライスCEOにテスラを贈った。

Dan Price

プライスによると、同社は中小企業向けの決済処理量を3倍以上に増やしたという。新型コロナウイルスのパンデミックが発生するまで売上高は毎年増加していた。

しかし、パンデミックが本格化すると状況は一変した。「2020年は、17年間の会社の歴史の中で、初めて売り上げが伸びない年だった」とプライスが言うように、同社の売り上げは50%減少した。

それでも「そこから立ち直ることができた」。大規模な一時解雇を防ぐために、社員が進んで給与カットを受け入れたのだ。彼らは後にその払い戻しを受けている。

プライスは、今年は再び増収を達成できると考えている。そして、他の企業とは異なり、最近問題となっている人手不足にも悩まされていない。

彼は、従業員中心のビジネスモデルを展開しており、無制限の育児休暇や有給休暇といった福利厚生も充実させている。そのため今年は1つの欠員に対して300人以上から応募があったという。「生活に見合った賃金を支払うことが、人材を発掘し、定着させるための大きな要因になることが分かるだろう」とプライスは述べた。

これは、ピザチェーン&pizzaのマイケル・ラストリア(Michael Lastoria)CEOが、以前Insiderに語っていたことを思い起こさせる。&pizzaでは欠員が出るたびに100人以上から応募があり、これは「適切な賃金」を支払っているからだとラストリアは語っていた。また「生活に必要な基本的出費をまかなえるだけの賃金が支払われないのであれば、誰がそんな仕事をやると言うんだ」とも述べていた。

人手不足の影響について、プライスは次のように述べている。

「大多数のアメリカ人労働者から富裕層に向けて、残酷で組織的な富の再分配が行われている」

それに加え「住宅費や医療費、教育費などのコストもまったくコントロールできなくなっており、仕事ができない状況になっている」

プライスは、将来的には再び給与を上げようとしている。

「物価は年々高くなっているのに給与が上がらないのであれば、実際には下がっていることになるからだ」

参照: BUSINESS INSIDERより